メタリカ 真実の瞬間
- 出版社/メーカー: パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン
- 発売日: 2006/09/08
- メディア: DVD
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メンバー同士の不仲がバンド活動に支障をきたし、解散にまで至る事例は枚挙に暇がないのだが、ライブ中の様子しかほとんど目にすることのないわれわれは不和の実際を見聞きする機会を得ないのだし、バンド側にしても、そういう「人間くさい」状況は見せたくもないだろう。
メタリカの問題の中心は、ジェイムズ(ヘットフィールド)とラーズ(ウルリッヒ)という巨大なふたつのエゴの衝突、まあ言ってみればわがままがとりあえずは原因である(かに見えた)。
誰かがリフのアイデアを出したとしても、お、それはいい、それでいこうといってすんなり一発で通ることなどまずないし、歌詞にしても同様で、たまたま会話の中に登場したフレーズをピックアップし、試して歌ったりするんだけども、ピンとこないとかなんとかいって、これが延々と続く。そもそもひとつの作品(曲、アルバム)を共作するというその出発からしてたいへんなことだが、メタリカの場合、メンバーそれぞれに自信が漲っており、事実、才能があり、そこへ「メタリカ」という「ブランド」が覆いかぶさっている。しょぼい作品を出すわけにはいかない。ジェイムズは「ロード」「リロード」は失敗だったとこぼしていたから、余計に重圧があったのかもしれない。
メンバーの私生活もおもしろい。みんな(ベースのジェイムズは脱退しているので、ジェイムズ、ラーズ、カークの三人)大金持ち。ジェイムズは「今は」家族最優先の人で、バレースクールに通う幼い娘を夫婦で見に行ったりしていた。カークはサーフィンに興じ、私有の牧場で馬にまたがるアウトドア派。ラーズは自宅に著名な作家の絵画を飾り、バスキアの作品をオークションに出したり。
アルバム「St.Anger」の制作に際しては、期間を通じて専属のセラピストを雇った(月40000$)メタリカ。貧相な風貌でバロウズのような顔をしたおっさん。メンバーのあいだで口論が始まると第三者の立場からときおり客観的なことを口にする。あれを数年間毎日とは気の滅入りそうな職業だと思った。