日本的霊性

日本的霊性 (岩波文庫)

日本的霊性 (岩波文庫)

著者は日本人の「霊性」は鎌倉時代に初めて目覚めたと言っている。霊性すなわち宗教意識は背景に大地(自然)があってこそ覚醒するものだ。平安時代の貴族たちは都で優雅に歌なぞを詠み、万事に涙するばかりの俗人だった。平安以前は素朴な野人。鎌倉時代になって武士が台頭した。武士は農民と直接の交流がある。農民は大地のいわば使徒。ここに霊性の芽吹く下地が準備された。インドで生まれた仏教は中国に伝播した。日本に伝わった浄土経典は親鸞を通過し絶対他力的救済観へ変貌を遂げた。インドでも中国でも起こらなかったことである。なぜなのか。ここに日本的なる霊性が据え置かれる。