批評の誕生/批評の死

この本そのものは「文芸批評」というより「文芸評論家批評」というべきなのだろうか。まあいい。例によって、まだ全部読み切っていない。私にとっての本当に面白い(興味深い)本とは、寝食を忘れて一気に読み通すというものではなくて、まずひとつひとつの文が濃密であり、難解でなく、連なった文と文のあいだに飛躍がなく、最後に全体として一定のヴィジョンが示される類のものだ。そして、これまで私が抱いていた「文芸批評」のイメージとは、難解な文章、文同士の繋がりがよく分からない、カギ括弧だらけ、ひとまず読み通すことはできるけれども、何がいいたいのかは大抵見えない、というものであった。だから、文芸批評が「嫌い」ということではもちろんなくて、文学、映画、絵画といった「芸術作品」を前にして人が下す良し悪しの判断はむしろ「好き」なのであり、私自身思えば「批評」ばかりして生活している気がする。(つづく)

批評の誕生/批評の死

批評の誕生/批評の死