堕落論

堕落論 (集英社文庫)

堕落論 (集英社文庫)

読みはじめたばかりで通読にいたってはおりませんが、突然、坂口安吾。「堕落論」「続堕落論」は率直な意見。発表当時、読み手に与えたであろう衝撃を当然とはいえ、ぼくは味わえないのがもどかしい。「日本文化私観」は、「日本精神」に関する次の一節でハンナ・アーレントとおなじことを言ってるなと思いました。

タウトは日本を発見しなければならなかったが、我々は日本を発見するまでもなく、現に日本人なのだ。我々は古代文化を見失っているかもしれぬが、日本を見失うはずはない。日本精神とは何ぞや、そういうことを我々自身が論じる必要はないのである。(P46)

イェルサレムアイヒマン』で「ユダヤ人に対しての語り口が軽薄(flippant)」だと非難されたときに、自身ユダヤ人であるアーレントユダヤの伝統について、私が何をしようが、私のふるまいのすべてにユダヤの伝統が刻印されていると抵抗した。ユダヤ人に向かって「おまえ、それでもユダヤ人か!」と糾弾するのはナンセンスというわけ。宮台真司が「伝統主義」を叩く際、引き合いに出す話でございます。

イェルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告

イェルサレムのアイヒマン――悪の陳腐さについての報告