美容院を変えた

小学生の頃から通い詰めてきた逗子の美容院「Fine」。
夫婦で経営していて、旦那さんがサッカー好きなので、
カットのあいだはサッカーの話で盛りあがる。
髪を流して席に付くと、目前のカウチに置かれてある
のは硬派なスポーツ誌「Number」。
「長さはどうします?」とはお決まりの第一声。
「いつもと同じでいいです」という私からの返答が
15年近くつづいてきたのに営業トークは忘れない。
プロである。
聞かれるまえから答えは決まっている私とて、注文を
とらずに切り始めたときには、うろたえるに違いない。
「ちょっと待って。たしかに私は毎回、同じ髪型で芸
がない。ないけど、でも聞こうよ。それが商売っても
んだよ。シュートを打たなければゴールは決まらない。
聞いてなんぼでしょ」
カットが開始される。すかさず私の視線は「Number」
のサッカー記事へ。旦那の視線は私の頭髪に向かう。
「ゴールに向かう姿勢」というやつだ。もくもく
と「伸びた分」にだけ鋏が入っていく。「ロナウジー
ニョはやばいですよ、ロニーのキュッキュッとやるあ
の「足首ぬき」はマジやばい」会話はひたすらサッカー。
その「Fine」を今日、ついに裏切ってしまった。
美容用品のメーカーで営業の仕事をしている友人の
Aちゃんの紹介で、表参道の美容室「PEEK-A-BOO」の
予約を午前11時にとったのである!
http://www.peek-a-boo.co.jp/
数日前のこと、私はいつもどおり台湾にいた。
その日、PCの前に座ってネットで遊んでいると、
珍しくAちゃんがメッセンジャーでオンラインになった。
しばらく世間話に花が咲く。
「前におすすめの美容院があるって言ってたじゃん」
「ああ、そう。どうするのかと思ってた」
「次、帰国したら行ってみるよ」
「ホントに?いつ行く?」
「えーと、12月4日なら行かれる」
「じゃあ私の名前で紹介しておくよ。というか、今、電話しようか?」
「お願いします」
「PEEK-A-BOO」は表参道一帯に6店舗開いているから、
それなりに繁盛しているのだろうか。どこの街へ行っ
ても歯医者と美容院は星の数ほど散らばっているので、
6店舗がどれほどの繁盛なのか、想像もつかないが。
さて、今回、私がもっとも不安だったのは、自分の言葉
で髪型の注文を付けられないことであった。
なんせ15年間、「長さは?」「同じで」という算数の
図形問題のようなやり取りしか経験してこなかったのだ。
そこで私はどうしたか。正直に事情を述べた。
「あのね、変な話なんですけど、自分で自分をどうしたら
いいのか、分からないんですよ。説明できないんです。
つまり、いろんな髪型があることは知っていて、私の説明
次第では、あなたがそれを実現できるかもしれないことも
知っているんです。だから余計にくやしいんだけども、と
もかく今日は、私の髪の毛に関する限り、全てをあなたに
委ねたい。」
すると、美容師は言い放ったね。
「とりあえず1回洗って、髪の毛の質を見てみましょう」
「名案!」
結論を述べると、15年近く続けていた私のカットは「重す
ぎる」らしい。これだと、整髪料をまぶしたところでベタッ
とするだけで変化がつかないという。
たしかにそうだった。そうだったのかあ!
で、軽くしてくれたようである。
パッと見、あんま変わってないんだけど(笑)。
でも、親切で感じよかったので、次も行きますPEEK-A-BOO。