『LOFT』

yourou2006-09-14

黒沢清の新作を見た。2004年12月12日の日曜日、ひとりで横浜美術館に出かけて聞いた黒沢監督の講演の中で、この作品の完成が告げられていたから、公開にこぎつけるまで、それから一年半を超える時間が過ぎたことになる。何かドタバタがあったのかもしれない。
キャスティングが目を引く。中谷美紀豊川悦司西島秀俊。そして、安達祐美。目の下を黒く塗り、喪服のような真っ黒のワンピースに身を通して、薄暗い部屋の隅に直立している。幽霊らしいのだが、ぜんぜん怖くない。何してるの?という感じだ。安達祐美という存在は、むしろ怖いのだが、そんな彼女が怖さを演じると滑稽に転じてしまう。
怖がらせ方の点で、これまでの「ずらし」が影をひそめ、オーソドックスなホラー映画の文法にしたがっているように見えた。意図的だとして、果たして、効果をあげていたかどうか。黒沢映画では、辻褄合わせの「なぜ?」の頻発はひかえるべきなのだが、私はそこはあまり気にしておらず、恐怖と滑稽が同居する生々しい画面との遭遇を面白がってきた口だ。しかし今回は驚く場面があまりなかった。
公式サイト→http://www.loft-movie.com/