KIYOSHI KUROSAWA EARLY DAYS

黒沢清の映画術

黒沢清の映画術

 
新潮社から『黒沢清の映画術』が発刊になったのを記念して開催されたイベントに参加した。場所はお茶の水アテネ・フランセ文化センター。黒沢清立教大学に通っていた頃に撮影した幻といってよい作品が2日間限定で公開される。ご存じのようにアテネ・フランセにはエレベーターとエスカレーターがないので、4階の会場まで階段をのぼらないといけない。知ってはいたものの、蒸しかえる暑さをくぐりぬけて駅から歩いてきたあとだけに、こたえる。ところがこの日は、登頂を果たし、チケット買って、さ、席に座ってすずも、と事が進まなかった。入り口から大行列。それがのぼってきたのとは別の階段の方向へ、階下に向かってえんえん続いており、見下ろせば螺旋状に並んだたいへんな数の人間がチケットを胸にしている。列の最後尾めざして下山開始。端っこは地下一階でした・・・。広いとはいえない会場にこれだけの人が集まっていれば、すでに立ち見の予感がくすぶっているわけで、チケット売場に近づくと、案の定、「ここから先、ご入場の方は立ち見となります」の声。チケットを買って、座布団がわりにどうぞと係員から差し出されたのは映画パンフで、これは紙切れですから、シネフィルはこういうのをお尻の気休めに用いるのかと無理矢理納得しました。左右に配置された座席の真ん中の通路を抜けて、ほとんど最前列の位置に座布団を敷き、体育座り。


この日は上映後にトークショーがあって、黒沢清青山真治蓮実重彦の3名が当時の思い出や映画にまつわるエピソードを語る。豪華という他ない顔ぶれ。大行列の原因である。どれほど豪華なのか。黄金の三角形の一角、蓮実重彦トークの中でそれを語ってくれましたので、記憶を頼りに再生します。

黒沢清蓮実重彦の俳優としての可能性を考えてみたい、という青山真治の問題提起を受けて、さらりと流したあと)
蓮実重彦:「ちょっと、違う話になりますが、ある人に今日黒沢さんと青山さんと話すということを言いましたら、それはソクーロフ三部作ですね、というんですね。その方は別にシネフィルでもなんでもないんですが、そうおっしゃった。すると、当然ですが、誰が誰なのかということになるわけです。」

アレクサンドル・ソクーロフの比較的最近の映画で独裁者三部作というのがあって、『モレク神』でヒトラーを、『牡牛座』でレーニンを、そして、ようやく公開にこぎつけた『太陽』で昭和天皇を取りあげています。そこで蓮実さんは、黒沢清レーニンではないか、という。

この日の上映作品は次の3つ。

東京から遠くはなれて 1978(35分)
監督/田山秀之
撮影/黒沢清 出演/万田邦敏 黒沢清


しがらみ学園 1980(63分)
監督/黒沢清
出演/森達也 久保田美佳 鈴木良紀


逃走前夜 1982(8分)
監督/黒沢清
万田邦敏 出演/浅野秀二 塩田明彦