けったいな連れ合い

けったいな連れ合い

けったいな連れ合い

作家・車谷長吉の奥さんで詩人の高橋順子の随筆。初版は2001年だが、本書の存在を知ったときは、すでに絶版となっていた。古本サイトで注文して手に入れる。時事ニュースに過敏に反応してマス目を埋めるタイプの随筆が多い昨今、<畸人伝中の人>車谷とそれに振りまわされながら、剛胆にやり合う妻の蠢きは、超俗の境地とまでは言わずとも、古きよきではないが、懐かしい風景が浮かぶようでもある。著者が長年参加しつづけている詩の朗読会でのエピソード。「孤独」を表現しようとコートを着た背中をこちらに向けたまま読みあげる人を、聴衆に失礼ではないか、勝手に孤独にならないでほしいと切り捨てる。詩は「生の感情を隠匿するところ」とは田村隆一の言葉だが、変に情緒にひたらないところが、気持ちよいです。