ファイアーバード

デラックス

デラックス

No.3

No.3

 
今ハマってるのが、このバンド。カーカス、とりわけその初期の活動に浸ったことのある人間が、このバンドをどう受け止めるのか。そんなありふれた角度の視点にも興味はあるのだが、タイミング的に遅すぎるので(結成が99年なので)、おく。私の感想。素晴らしい!

カーカスの最期の頃はすっかり自信を喪失していたし、自分の音楽的な個性を再び築き上げるまでに時間がかかった。だから、それまでの俺のキャリアを知らない人達と一緒に活動して、何が出てくるかを見たかったんだ。でも、ヘヴィな音楽が背景にないという人と一緒にやることにも、次第に限界を感じ始めた。

1stのライナーノーツからの引用。創造の世界に生きる人たちがほとんど必ず取り込まれるサイクル、すなわち、「才能と若さと勢いで前人未踏の傑作」→「マンネリ化」→「別路線への転身」が吐露されている。そして、時間が経っていくうちに、ビルが「背景」と呼ぶものの「違い」に耐えきれなくなってゆき、「70年代スタイルのロック」に傾斜が向かう。「違うから面白い」という感性と「違うからダメ」という感性のあいだに挟まれながら、どこから「創造」がはじまるんだろう。
ファイアーバードとはあまり関係のない話。昔はあまりなかったことだと思うのだが、特定の音楽や本を「好き」という「一語のみ」でアピールすることを「個性」の表明であるかのように振る舞う輩が、ネットを見渡すと実に多い。「好き」を表現するにもいろいろ仕方があるけれど、ビルのいう「背景」を語らずに「好き」を人に分かってもらおうとしていることが、好きを連呼する者には明らかで、その度にひいてしまう。