佐藤愛子『我が老後』(文春文庫)

我が老後 (文春文庫)

我が老後 (文春文庫)

 
著者の笑いのツボが私のとぜんぜん合わない。

米屋の小松原さんと道で会ったので、
「小松原さん、お米四キロ、お願いするわ」
といったら、小松原さんは、
「四キロネ、ニンゲンのお米ネ?」
といったので、私はひとりで笑ってしまった。 (P17、「我が闘い」の書き出しより)

どこかおかしいだろうか。佐藤愛子の家では犬を飼っていて、犬には犬用の安い米を買ってごはんに与えており、それとは別に佐藤用のコシヒカリがあるので、米屋は確認の目的で上のごとき質問を投げかけた。「ニンゲンので」で済ますのが常識的な応答だろう。こらえきれずに「笑ってしまう」ほどの何か(私には分からないが)を小松原さんの発言のうちに認めることがあったにしても、笑い声を描写すべきとこではないか。
・私はひとりで「あーはっはっはっ!」と笑ってしまった。
・私はひとりで「く、くくく、くくくく・・・」と笑ってしまった。
・私はひとりで「ぷっ」と笑ってしまった。
・私はひとりで「ぶひひひひ・・・!」と笑ってしまった。
14編中はじめの2編のみ読んで、ウソばっかり書いてあるなと思った。
ウソというか、センスのない誇張と無意味なこだわりの自慢。

このジャガ芋と昆布を刻む仕事が、なぜか私は大好きなのである。(P18)

「なぜか」「大好き」「なのである」・・・。大げさ。
題がまたいただけない。『我が老後』というが、書いている時点で著者は若干六七歳。人生これからというときだろう。エルボー洗って出直し!