まじめなおっさんの肖像

うちの犬はまじめです。
私が何を言っても、決して笑いません。
かわりに、ひたすら見つめてきます。
無言の見つめ合いに突入すると、人はたいてい
目のやり場に困り、おろおろしてしまう。
そこで目を反らすなり、言葉を発するなりして、
事態の収拾に努める。それすらつらいときは、
初めから目を合わさないという手も、避けたい
とはいえ、ある。
（うちの）犬が相手だと見つめ合いが快適です。
といって、視線が「無垢」だからでは断じてない。
ためしに、顔や体を撫でたり、突っついたりして
接近すると、たちまち近くにあったタオルをくわえて
はしゃぎだし、視線は途絶え、見つめの意図が私との
格闘の催促であったことが知れる。
まじめなことに変わりはないのだが。